払いすぎていませんか?相続税にもある過払い金について

払いすぎていませんか?相続税にもある過払い金について

2509view

2018.07.05

相続が不得手な税理士は少なくない

相続税における過払い金とは?

相続税における過払い金がとくに発生しやすいのが土地を相続した場合です。その理由は、土地を評価する方法が複雑をきわめるため、不動産の鑑定評価をすることに慣れていない税理士では的確な対応が難しいからです。

土地を相続する場合、的確な評価額を算出するには不動産鑑定の専門家である不動産鑑定士に依頼する必要があります。しかし、そのようなプロセスがとられることは稀。税理士が評価額を決定していることが少なくありません。

ところが、多くの税理士は相続税に関する実務経験が少ないのが現状です。土地を正しく評価することに慣れておらず、ごく一般的な計算を行なって最終的な申告をすませてしまう例が少なくありません。そのため、本来であれば減額される条件がある土地であるにもかかわらず、誤って実際よりも高い評価をしてしまい、結果として相続税を払いすぎてしまうというわけです。

「財産評価基本通達」とは?

土地の評価額を決定する際、相続を専門的に取り扱う一部の税理士を除いて、一般的な税理士の多くが依拠しているのが、「財産評価基本通達」と呼ばれるものです。「財産評価基本通達」とは、国税庁が定めるもので、相続税を計算する際など、対象となる財産を評価するための基準について記されています。

この「財産評価基本通達」において、相続税の財産を評価するのに適用されているのが、「路線価」です。これは、不動産の専門家に依頼することなく、土地の評価額を簡易的に計算できるように作られたもので、国税庁のホームページに掲載されている「路線価図」を参照することで、誰でも簡単に土地の価値を判断することが可能です。

「路線価図」では、道路一本一本に数字とアルファベットが記載されています。例えば、「165D」とある場合、その道路に面した土地の価格は、1平方メートル当たり16万5,000円であることを示しています。ちなみに、アルファベットは借地権の割合を表しています。

地積と路線価による単純な計算では、土地の形や広さなど、減額処理が反映されません。そのため、実際の地価よりと高い評価額が算出されてしまうのです。

専門家によるセカンドオピニオンの必要性

相続税にもセカンドオピニオンを

そこで必要になるのがセカンドオピニオンです。相続税に慣れた税理士に相談することで、過払い金があることが発覚し、多額の還付金を得られることが少なくありません。

例えば、父親を亡くした東京都に住む男性は、従来から付き合いのある税理士に申告を任せ、その結果いったん多額の相続税を納付しました。ところが、相続に関する税務に詳しい別の税理士に相続税の申告を依頼したところ、その半分に近い額の還付金を受けることができました。

亡くなった父親が所有していた土地の多くが実際よりも高く評価され、減額処理がなされずに申告されていたためです。

医療の世界では、専門分野が細分化され、各医師はそれぞれ自分が詳しい分野の医療に従事しています。ところが、税理士は実に広い領域をカバーしなくてはならないにもかかわらず、医療のような専門分野は設けられていません。

ほとんどの税理士にとっては、株式会社や個人事業の確定申告を行なうことが主な業務であり、相続を扱うことが少ないため、普段から必要な知識や技術を蓄積するのが困難です。

実績の少ない税理士ほど、やはり相続の専門家ではない税務署員に相談した結果、伝えられた通り実際よりも高く申告してしまいます。病気を患った際、セカンドオピニオンを求めることが一般的になってきているのと同じように、相続税の申告に際してもセカンドオピニオンを求めることが必要といえるでしょう。

請求期限は被相続人が他界した翌日から5年と10ヶ月

不動産鑑定士や別の税理士が、土地を評価し直して更正の請求書を税務署に提出する場合、相続税の還付は正式に認められています。ところが、この請求を行なう上での期限がきちんと決められているので注意が必要です。

相続税は、被相続人が他界したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告しなくてはなりません。更生の請求ができるのは、相続税が申告期限を迎えてから5年以内となっています。つまり、被相続人が亡くなった翌日から数えて、5年と10ヶ月が経過する前に請求しなくてはなりません。

相続税を不得手とする税理士が単独で申告を行なっている場合、過払い金があることが判明し、還付金が発生する可能性はかなり高いといえそうです。すでに相続税を払ってしまったケースでも、更生の請求期限を迎えていないかどうか、チェックしてみるとよいでしょう。

原因の多くは土地の評価のミス

不整形地と土地評価の難しさ

単に数字の記入ミスによる相続税の払い過ぎもありますが、ほとんどの場合、過払い金が発生する原因は土地評価が間違っていることにあります。地積と路線価による単純計算だけで土地評価がなされ、土地の形状や周辺エリアの状況などによる評価額の調整がなされていないのです。

形状が正方形や長方形ではない、歪みのある「不整形地」の価格を正しく算出するには、評価額の調整が欠かせません。例えば、一見したところ四角い形状に見える土地でも、道路に斜めに面している場合、不整形補正することで評価額を低くすることが可能なのです。

また、かげ地割合を求めることで、不整形補正率が高くなり、評価額が下がることもあります。このほか、土地の価格を正しく評価するには、複雑な計算が必要です。税理士にとって正しい土地評価がいかに難しいかがおわかりいただけると思います。

広大地評価とは?

土地評価において、とくに間違えやすいといわれているのが、「広大地評価」です。その名の通り、広い土地の価値を評価することをいい、東京や大阪といった大都市なら500平方メートル以上、その他の市街化区域なら1,000平方メートル以上、市街化区域以外なら3,000平方メートル以上が概ね広大地とされます。

広大地は高く売れる印象がありますが、規制があるために、実際には買い手が少なく、買い手がある場合でも、道路が必要と判断される場合など、足元を見られて価格を値切られることが少なくありません。そのため、一般的な土地に比べて減額が認められているのです。

「広大地評価」で難しいのは、分譲する上で道路の整備が必要かどうかという点。国税庁のホームページにはいくつか事例が示されていますが、「広大地評価」をして申告し、万が一、税務署から道路が必要ないと判断されれば、追徴課税などのペナルティが発生してしまいます。

こうしたリスクを回避するため、いったん「広大地評価」せずに申告し、後日になって改めて「広大地評価」するという手法が一般的です。過払い金の還付を受けるなら、「広大地評価」に関する一連のプロセスを熟知した税理士に相談するのが賢明です。

過払い金が生じやすいのはこんな土地

セットバックが必要な土地

最も間違いが起きやすいのは広大地ですが、そのほかにも過払い金が発生しやすいといわれる土地があります。例えば、セットバックが必要な土地。道路の幅が4メートルに満たない場合、そこに面して建物を建築することはできないため、減額対象となります。

がけ地や傾斜地

土地が傾斜していて、そのままでは建物を建築することが難しい場合、平坦にするために土を入れるなどの作業が必要になります。これも減額対象となります。

高圧線の下にある土地

土地の上空に高圧線が通っている場合、建物を建築する上で規制がかかったり、建築そのものができなかったりします。そのため、減額対象となっています。

このコラムが気に入ったら
ぜひ「いいね!」をお願いします♪

みんなに役立つ情報をお届けします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

あわせて読みたい関連コラム

掲載中のコラムを見る