任意整理後の過払い金請求は可能か? 任意整理と過払い金の関係について

任意整理後の過払い金請求は可能か? 任意整理と過払い金の関係について

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2018.07.05

私的整理である任意整理と過払い金請求について

任意整理とは

借金を返済できなくなった時の救済措置として、債務整理があります。債務整理は私的な整理である任意整理と、公的整理である個人再生と自己破産があります。私的整理である任意整理は、裁判所を通さずに債権者と債務者間で直接交渉を行う方法です。

貸金業者やカード会社などから借りたお金が何らかの理由によって返済するのが難しくなった時に、最も利用される方法が任意整理です。

過払い金請求とは

過払い金請求とは、過去に払い過ぎた利息を取り戻す方法です。かつて貸金業者やカード会社はお金を貸す時、民事上では違法でも刑罰の対象とはならない「グレーゾーン金利」という、利息制限法の上限20%以上、出資法の罰則対象となる29.2%未満の高い利息を付けていました。

これが、2010年6月18日に出資法の上限金利が利息制限法の水準の20.0%に引き下げられたことを受けグレーゾーン金利も廃止、行政処分の対象となったのです。

2008年12月以前に借金をしたことがある人や、10年以内に借金を完済している人は、「グレーゾーン金利」の存在した期間に該当するため、過払い金が戻ってくる可能性が高いのです。

任意整理でも信用情報に影響がないケースとは

借金の返済に苦しんでいる人が、任意整理をためらう主な理由が「信用情報に登録される」ことです。任意整理は債務整理のひとつですので、任意整理後5年間は信用情報機関へ登録され、新しいカードやローン契約ができないなどのデメリットがあります。

ただし、任意整理を行っても信用情報に登録されないケースがあります。それは、発生していた過払い金で借金が全て返済できた時です。借金がなくなれば当然信用情報に登録はされません。

過払い金請求をしていなければ、任意整理後も可能

既に任意整理を行っていた人が、「過払い金が戻ってくる可能性が高い」場合、改めて過払い金請求を行うのは可能でしょうか?

これは、任意整理を自分で行ったか、弁護士や行政書士などの法定代理人に依頼したかで異なります。任意整理を自分で行った場合は過払い金請求をしていないことがほとんどですので、任意整理後にも過払い金請求は可能です。

一方で法定代理人に依頼した場合は、任意整理の一環として過払い金請求を既に行っていることが多いので、過払い金請求は既に終わっている=できないということになります。

ただし、法定代理人に任意整理依頼したにも関わらず、過払い金請求が行われていないケースがあります。この時はもちろん、任意整理後の過払い金請求は可能です。

任意整理の流れとは

開示請求から任意整理の申し入れまで

任意整理の申し入れには、正確な利息を把握した上での返済計画の立案が必要です。まず、貸金業者側へ債務者が取引履歴などの開示請求を行い、開示された内容に沿って利息の引き直し計算を行います。算出された正確な利息に沿って、返済計画を立案し、貸金業者側へ任意整理の申し入れを行います。

交渉開始から和解成立まで

任意整理の申し入れを貸金業者側が受諾すると、債務者・債権者間での交渉に入ります。交渉で和解が成立すると和解契約書を作成し、弁済が始まります。

任意整理は債務者本人が自力で行うこともできますが、弁護士や司法書士などの法定代理人に依頼するケースがほとんどです。次に、法定代理人に任意整理を依頼するメリットとデメリットを見てみましょう。

任意整理を法定代理人に依頼するメリット・デメリット

直接交渉をしなくてよい

私的整理とはいえ、直接債務者である借金をしている側、貸金業者などの債権者間で交渉しようとすると、債務者本人では交渉に応じてもらえないことが多いです。そのため、任意整理を行う時には一般的には弁護士などの法定代理人を仲介し、交渉を行います。

法定代理人を立てれば債務に関する交渉も一任できるので、自分で出向く負担が減るほか、債権者からの直接取りたてや会社への連絡の心配もなくなります。

将来かかる利息や延滞金もカットできる

弁護士・司法書士が間に入れば、支払総額、毎回の支払額の減額や支払期間の交渉をしてくれます。さらに、「一括返済するなら減額」「分割でも3年以内に返済なら減額」など、自分で交渉しても減額が難しい将来利息と遅延損害金も、法定代理人に依頼すれば減額してもらえます。

面倒な作業も一任できる

任意整理を行う前には、貸金業者側への取引履歴の開示請求や利息の引き直し計算、返済計画などの文書の作成など様々な作業が伴います。法定代理人に依頼すれば、これらの作業を自分で行う必要はありませんし、引き直し計算のミスなども防げます。

過払い金が回収できる確率が上がる

法定代理人に任意整理を依頼すると、任意整理の一環として過払い金請求を合わせて行うことがほとんどです。返ってくる過払い金を元本の返済に充てることができますので、返すべき借金のみを返済できます。更に、過払い金で借金を完済できれば、任意整理を行っても信用情報機関へ登録されることもありません。

弁護士を選べば、全ての借金へ対応できる

任意整理を行う法定代理人は弁護士、もしくは司法書士です。司法書士は元々会社や不動産の登記を行う職業ですので、任意整理に関した借金の法律相談や交渉、訴訟は「140万円以下」かつ「認定司法書士」のみが行えるという制約があります。一方で、弁護士なら借金の額の制約などを受けず、任意整理に関する全ての業務を担うことができます。

デメリットは弁護士選びで回避できる

任意整理を法定代理人に依頼する唯一のデメリットが、「過払い金が返ってこない場合がある」ことです。中には、過払い金が発生しているのにも関わらず請求を行わない悪徳な弁護士もいます。信頼できる弁護士へ任意整理を依頼することで、デメリットは回避できます。

また、すでに任意整理を行った人でも依頼した弁護士によっては過払い金が返ってきていないことも。任意整理後でも過払い金が請求できる可能性がある人も、弁護士へ相談してみましょう。

任意整理後にも過払い金請求は可能

私的整理である任意整理と過払い金請求の関係について見てみました。ここでポイントをおさらいしましょう。

  • 債務整理の中で、裁判所を通さず債務者・債権者間で直接交渉を行うのが任意整理。貸金業者やカード会社からの借金を整理する方法として一般的に用いられる。
  • 任意整理は弁護士や司法書士などの法定代理人に依頼するのがほとんど。自分で直接交渉や作業をしなくて良いだけでなく、将来かかる利息や延滞金のカットなど、良い条件での和解も可能。
  • 2008年以前の借金、または10年以内に借金を完済した人は「グレーゾーン金利」が存在した期間に該当するので、過払い金が発生している可能性が高い。既に任意整理を行った人でも、過払い金請求をするのは可能。
  • 任意整理を行っても、発生していた過払い金で借金が完済できれば信用情報に影響はない。法定代理人に任意整理を依頼すると、過払い金を回収できる可能性も高くなるので、任意整理をしても信用情報に影響しない場合も。
  • 任意整理を依頼する法定代理人は信頼できる弁護士を選ぶ。また、過去に任意整理をした人で、過払い金請求を行ったか不明な場合も弁護士へ相談すると良い。

以上を踏まえれば、任意整理と過払い金の関係について理解でき、任意整理後でも適切な方法で過払い金請求ができます。

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