過払い金を算定する計算ソフトのメリット・デメリット

過払い金を算定する計算ソフトのメリット・デメリット

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2018.07.05

過払い金が発生する仕組みとは?

過払い金の請求は引き直し計算から

過払い金の返還請求を行うにあたり、最初に行う作業が過払い金の額を確定させるための引き直し計算です。引き直し計算は、過払い金が発生する仕組みを反映したもので、専用の計算ソフトも多数あります。

かつて存在したグレーゾーン金利

過払い金とは、借金をした場合に法的に支払う義務がある合計金額よりも多く支払ったことで発生するものです。過払い金の額は、当然ですが多く払った部分の全額となります。このような差額が生じる原因には、グレーゾーン金利の存在があります。

グレーゾーン金利とは、利息制限法に定められている制限利率と、出資法に定められていた刑罰を科される利率との間の利率を指す言葉です。貸金業法の改正と、それに伴う出資法の改正までは、このグレーゾーン金利で融資を行っていた貸金業者が多数ありました。

なぜなら、貸金業法にあったみなし弁済規定を根拠として、出資法の上限までは有効と考えられていたためです。ところが、2006年の最高裁判決によってグレーゾーン部分が事実上否定されてしまいました。

これにより、利息として支払ったうちの利息制限法を超過する部分は元本に充当することになります。そして、元本が早く減少するため、トータルで支払った金額が、法的に払うべき元利合計金額を上回るケースが続出したのです。これが、過払い金が発生する仕組みです。

つまり、引き直し計算とは、グレーゾーンの約定利率ではなく、利息制限法の制限利率で取引履歴を再計算することをいいます。その結果、差額が明確になり、返還請求の根拠が生まれるのです。

有料も無料もある過払い金の計算ソフト

手計算では無理がある引き直し計算

さて、過払い金として請求する金額を算出する引き直し計算ですが、手計算をしたのでは手間がかかって仕方ありません。また、計算ミスがあればそこから全部やり直しということになってしまいます。

パソコンが普及している今日において、引き直し計算は一般に計算ソフトを利用して行うものです。手計算で素早く算出できる人がいたとしても、パソコンの計算ソフトのように、数値をひとつ変えただけで瞬時にすべての計算結果が変わる技は持っていません。無理せず計算ソフトを使いましょう。その過払い金の計算ソフトには、有料ソフトもあれば無料ソフトもあります。

有料ソフトと無料ソフトの違いとは?

有料ソフトと無料ソフトがあると聞けば、有料ソフトの方が効率的であるとか、性能がよいとか、きっと差があるのだろうと思うところです。しかし、単純に有料がよくて無料はそれよりも劣るという話にはなりません。

まず、有料のソフトは、お金を取るだけあってしっかりと作られていると考えることができます。これに対し、無料のソフトはプロでも使えるものから、そうでもないものまで完成度にバラつきがあるといえるでしょう。つまり、無料であっても有料のものと遜色のないソフトがあるということです。

そもそも、過払い金の算出をする引き直し計算では、入力項目といえば日付、借入額、返済額くらいのものです。そして、入力データを処理して利息を計算し、残高を出します。パソコンソフトの仕事として考えた場合、この程度であれば使用する数式や関数もほぼ同じようなものになると考えられ、大きな差がつきにくいものといえます。

それでは、計算ソフトが多数あるのはなぜなのかという疑問が沸いてきます。細かなところでユーザビリティーに工夫がされているなどの差別化がひとつの答えです。また、詳細な結果を知るためのソフトと、簡易な判断をするためのソフトというように、役割分担がなされている点も見逃せません。

既存の計算ソフトを選ぶなら、有料か無料かよりも、使い勝手がよいことや、自分が望んでいる用途に合っていることを重視するとよいでしょう。とはいえ、問題なく使えるのであれば、お金がかからない方がありがたいのも事実です。

無料ソフトの中には、名古屋式や外山式と呼ばれる超有名なソフトがあります。この2つのソフトは、実際の債務整理や過払い金請求にも使われている優秀なものです。

過払い金の計算ソフトを利用するメリットとデメリット

計算ソフトを利用するメリット

過払い金の計算ソフトを利用するメリットといえば、手軽で確実な結果を得られることです。まず、電卓を叩く必要がありません。手元にある取引履歴のとおりに数値を入力するだけで、利息制限法の制限利息を適用した結果を求めることができます。仮に、どこかで入力を間違えたとしても、その数値だけを修正すれば正しい結果に置き換えてくれる点も計算ソフトのメリットです。

さらに、手計算だと忘れてしまう可能性がある、追加借入時の未払い利息(その日までの前残高にかかった利息で、次回返済まで残る利息)の処理も、計算ソフトなら普通の足し算や引き算と同様に行ってくれます。

また、計算ソフトの計算結果をプリンタで印刷すれば、手書きのものよりも見やすくきれいな書類ができあがります。文字にすればたったこれだけのことですが、絶大なメリットだといえるでしょう。

計算ソフトを利用するデメリット

メリットの陰にはデメリットもあります。過払い金の計算ソフトを利用するデメリットは大きく3つ考えられます。

  • ミスに気付かない可能性…入力ミスは計算結果が変わってしまう重大事ですが、細かい数字が並んでいる中では気付かないこともあり得ます。もっとも、入力した数字を見直すことで修正が可能です。
  • 計算式の間違い…入力が正確でも計算式が違っていれば使い物になりません。ただ、多くの人が使っているソフトであれば、まず心配はありません。また、本番入力の前に、簡単な数字を入力してチェックすれば、最悪の事態は免れるでしょう。
  • データが飛んでしまう…パソコンを使用する関係で、データが飛んでしまう可能性があります。そんなときでも、バックアップを取っておけば安心です。

過払い金計算ソフトのカシコイ使い方

本番用の計算ソフトと簡易なチェッカー

過払い金計算ソフトには、名古屋式のように請求金額を算出するためのものと、個別の履歴ではなく総額や取引年数などから過払い金の推測を行うためのものがあります。前者を計算ソフトと呼び、後者をチェッカーと呼ぶこともあります。

過払いの可能性を探るチェッカー

まず、自分にも過払い金があるだろうかと思っただけの段階なら、チェッカーを利用して過払い金の発生可能性と想定金額を調べてみるとよいでしょう。債務整理や過払い金請求に力を入れている法律事務所や司法書士事務所の中には、ホームページにチェッカーを置いているところもあります。

チェッカーで過払い金がありそうだとなれば、次に考えることは過払い金請求を行うかどうかです。過払いではあるものの、金額的に手間と時間をかけるメリットがないと思えば、やめておくという選択もあるでしょう。

注意が必要なのは、チェッカーは項目が少なければ少ないほど精度が犠牲になることです。試してみればわかりやすいですが、実際の数字とはかけ離れた結果が出る可能性もあります。したがって、目安として使うにしても、ある程度の項目数があるチェッカーを利用した方がよいでしょう。

チェックにも使える本番用の計算ソフト

総合的に判断した結果、過払い金請求を決断したなら、正確な金額を算出できる計算ソフトで請求額を確定させます。

また、正確な計算ソフトなら、入力を大まかにすることで、精度を上げたチェッカー的な使い方も可能です。チェッカーの精度が心配な場合は、はじめからこちらを使う手もあります。

最後に、過払い金の計算ソフトで正確な計算をするためには、正確な取引履歴が必要だということを付け加えておきます。業者に対する取引履歴の開示請求など、心配な点は弁護士に相談してみましょう。

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