交渉か訴訟か?ケースによって異なる過払い金の返還総額

交渉か訴訟か?ケースによって異なる過払い金の返還総額

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2018.07.05

訴訟になるかどうかで異なる過払い金の総額

貸金業者との交渉による過払い金の返還請求の場合

過払い金の返還請求に際しては、多くの人が訴訟を起こすことなく、貸金業者との交渉によって円満に解決したいと考えているのではないでしょうか。ところが、実際のところ、交渉によって思うような過払い金を手にすることはほぼ不可能と考えておいたほうが良いでしょう。

交渉の場において、貸金業者は、少しでも返還する総額を少なくしようと考えます。また、交渉には慣れていますから、返還総額を減らすための交渉術を心得ている場合が少なくありません。

交渉に際して、貸金業者は過払い金の総額のうち、7割程度、少ないときで5割ほどの金額を和解条件として示すことがほとんど。弁護士のスキル次第では、有利に交渉を進めることも可能ですが、ほとんどの場合、交渉だけで過払い金のすべてを取り戻すのは困難なのが現状です。

稀に、代理人を立てずに貸金業者と過払い請求の交渉に挑む人もいます。仕組みの上では可能ですが、あまり賢明とはいえません。交渉に慣れていないことが相手側にわかってしまうと、本来交渉で回収できるはずの返還総額から大きく差し引かれてしまう恐れがあります。いずれにしても、提示された和解金額に納得できないという場合は、訴訟を検討する必要があります。

訴訟による過払い金の返還請求の場合

訴訟となることで、過払い金の返還総額は高くなる傾向があります。かかる手間や時間を考えるとできれば回避したいところですが、裁判所を介在させる方法は納得のいく金額を回収する最良の方法といえます。

過払い金とは、そもそも貸金業者が法律に反して不当に獲得したものです。そのため、敗訴してしまうことはほとんどないと考えて差し支えありません。貸金業者は訴訟で勝つのが難しいことを知っていますから、訴訟を起こすことで和解を成立させるために大幅な過払い金の増額を示してくることがあります。

納得がいくようなら、この時点で和解として構いません。判決を待つ、待たないにかかわらず、訴訟を起こすことで、過払い金の返還総額が高くなることはおさえておきたいところです。

また、訴訟にはもう一つメリットがあります。それは、総額に5%の利息を付与して過払い金の請求ができるという点です。交渉では、過払い金の全額回収さえままなりませんから、利息の請求は困難です。訴訟であれば、多くの場合、利息を付与した金額の返還が貸金業者に命じられます。過払い金の総額によっては、かなりの額になる場合もあるはずです。

過払い金が返還されるのはいつ?

訴訟となると過払い金の返還時期は遅くなる

過払い金がいつ返還されるのかもあらかじめ注意しておきたい点です。当然のことながら、訴訟となれば、判決が出されるまで時間がかかりますから、返還時期も遅くなります。状況次第でさまざまなケースがありますが、大まかにいって具体的なスケジュールは以下の通りとなっています。

貸金業者からの取引履歴の取得

過払い金の総額を調べるためには、引き直し計算をしなくてはなりません。そのためには取引履歴の取得が欠かせないため、直接貸金業者に連絡して必要な資料を取り寄せます。ここで重要なのは、過払い金の請求が目的であることを相手方に告げないこと。

全ての情報が得られなかったり、過払い金と知って支払っていたとみなされ、請求そのものができなくなったりするリスクもあります。契約内容を確認したい、と伝えるのがよいでしょう。

過払い金がどのくらいあるかを明確にする

取引履歴をもとに、引き直し計算を行ない過払い金の総額を調べます。法が定める金利内での返済利息と、実際の返済利息の総額とを比較することで、過払い金を正確に算出できます。

過払い金の返還請求書の送付

直接交渉を行なうための返還請求書を貸金業者に送付します。この際、受理していないと突っぱねられるのを回避するため、内容証明もしくは配達記録郵便などを使います。これを個人で行なうと、ほとんどの場合、個人相手に交渉ができないと回答されます。やはり代理人を立てるのが賢明です。ここまでおよそ1、2ヶ月の時間を要します。

交渉が不成立となれば、過払い金返還訴訟を起こす

貸金業者と交渉が思うような展開にならない場合、過払い金返還訴訟を提起します。

判決に基づく過払い金の支払い

裁判所から判決が出され、貸金業者に過払い金の支払いが命じられます。勝訴判決が出てから過払い金が支払われるまで、およそ2ヶ月から4ヶ月かかるのが一般的です。裁判にかかる時間を考えると、過払い金が支払われるまで半年から1年以上かかる計算になります。

交渉なら返還時期は早くて2、3ヶ月

他方、貸金業者との交渉において早い段階で和解成立となれば、2、3ヶ月後に過払い金が支払われます。訴訟となると、時間だけでなく相応の労力も必要になります。少しでも多く過払い金を回収したいという気持ちはもっともですが、それほど金額にこだわらない場合は、交渉で和解へと持ち込むのも手です。

過払い金の返還時期は貸金業者次第の場合も

貸金業者の資金力

和解が成立した場合でも、貸金業者の状況次第では過払い金の返還時期が遅れる場合があります。重要な要素として挙げられるのが、貸金業者の資金力です。貸金業者によっては、並行していくつもの訴訟を抱えていたり、過払い金の返還のための交渉を進めたりしています。

中小の貸金業者など、資金力に問題がある場合、意図的に返還時期を遅らせるよう工作することがあります。他方、メガバンクが背景にいるカード会社であれば、早い段階で返還されます。

過払い金の返還請求の時効に注意

民法においては、債権が消滅する時効について明記されています。債権を有する者が一定期間に権利を行使しないとき、権利がなくなってしまうのです。他の債権と同様、過払い金は取引終了から10年経過すると請求権を行使できなくなります。

貸金業者のなかには、請求権の消滅を視野に入れ、手続きを延引しようとするものもあります。取引履歴の開示に応じようとしないときなど、時効の成立が近い場合はとくに注意が必要です。

和解か訴訟かを決めるポイントは?

返還される金額優先なら訴訟

過払い金の請求において、返還総額を重視するのであれば、訴訟を提起することになります。ただし、その際に知っておきたいのが代理人に対する報酬です。和解が成立した場合、弁護士ないしは司法書士には過払い金総額のおよそ20%が報酬金の相場といわれています。

ところが、訴訟となるとこれが25%にアップします。大切なのは、最終的にどのくらい手元に残るかです。金額を優先する場合は、どちらが理にかなっているかを考えましょう。

返還される時期を優先なら和解

少しでも早く過払い金を回収したい場合は、交渉による和解成立を目指すことになります。こちらの経済的事情から和解を求める場合も多いと思いますが、相手方となる貸金業者が資金難に陥っている場合など、倒産する恐れがある場合も、和解成立を目指すのが得策です。

貸金業者によっては、総量規制が足枷となり、倒産を間近に控えている場合があります。仮払い金を少額でも確実に返還してもらうには、和解がより有効というケースがあることも覚えておいてください。信頼できるパートナーと相談を重ね、自分にあった決断を下したいところです。

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